★第72回国際サレルノ映画祭 短編部門最高賞受賞★
映像詩『オシラ鏡』
監督/脚本/制作:新井 卓
2018/日本/20分/日本語/1.85:1/5.1ch/カラー/DCP
舞台は昭和初期、遠野郷、附馬牛(つきもうし)。春分を迎えるころ、まだ雪深い村に若い写真師がやってくる。写真師が手にするのは、世界最古の写真術・銀板写真(ダゲレオタイプ)の道具一式だった──。
かつて「記憶をもった鏡」と呼ばれた銀板写真には、目に見えない存在を写しとる力がある。写真師は、人ならぬものたちの姿を銀板におさめ、その魂を鎮めるため、あてどない旅をつつけてきたのである。
夜明けまえ、写真師は若馬を引いて山を下る。やがて、遠くの山から不思議なお囃子が聞こえはじめ、キツネの子どもたちが現れる。子どもたちにオシラサマの人形を託された写真師は、とある曲屋(まがりや)に荷を解き、馬のかたわらに人形を置いて、撮影の支度にとりかかった。
銀板を鏡のように磨きあげるうちに、次第に白装束の娘が姿を現す。彼女こそ、若馬と許されざる恋に落ちた、オシラサマ伝説の娘であった。激怒した父親に馬を殺され嘆き悲しみながら天に昇った娘は、銀板写真の力によって、現世に仮の姿をよみがえらせたのである。それはまるで、叶わなかった祝言の日の写真のように見えた。娘は若馬とともに銀板写真にじっと見入る。一陣の風が吹き、すべては幻のように、浅い春の弱々しい光線の中に消える。
出演:
高山 太一
田城 れおな、まいら
菊池 香春
菅野 莉桜
松下 昊介
糠森 長一
撮影 中川 周、新井 卓
編集 中川 周
録音/音響 山﨑 巌
衣装 中村 穂湖
助監督 ファニィ・ハーラン
絵コンテ 戸島 璃葉
題字 菊池 遙香
調教師 千葉 祥一
着付/メイクアップ 佐々木 アキ子
ロケバス 藤井 全子
デザイナー 大西 正一
第72回サレルノ国際映画祭 正式出品作品
後援:遠野市