
意気込み十分な新入社員が、ほとんど誰とも交流がないまま、初日にいきなり、テキスト中心のオンボーディング資料を大量に渡される――そんな状況を想像してみてください。
温かい歓迎とは言い難いですが、今日のオンボーディング環境においては、決して珍しくないことなのです。
こうした新入社員への負担の影響は小さくありません。質の低いオンボーディング体験は、最初の数週間を過ぎても長く尾を引きます。調査によると、入社直後の体験に満足していない社員は、仕事を辞める可能性が2倍に高まるそうです。
では、新入社員が「歓迎されている」と感じ、積極的に業務に取り組むようになり、会社に定着するリモートオンボーディングプログラムは、どうすれば作れるのでしょうか?このガイドでは、リモート環境におけるオンボーディングを成功させるためのベストプラクティスを紹介します。5ステップのアクションプランや、オンラインオンボーディングに活用できる動画のヒントも盛り込みました。新しいチームメンバーがすぐに戦力として活躍できるよう、サポートします。
リモートオンボーディングとは?
リモートオンボーディングとは、新入社員に自社の社風やチーム、業務に必要なツールを紹介し、業務にスムーズに馴染めるようサポートするプロセスです。しっかりと設計されたオンボーディングプログラムがあれば、新入社員は自分の役割や会社について理解を深め、チームメンバーとの関係も築きやすくなります。
理想的には、オンボーディングはオフィスを案内したり、一緒にランチに行ったり、握手を交わしたりと、直接的な交流を含むものです。しかしリモートオンボーディングでは、これらをすべてオンラインで行う必要があります。ビデオ会議、オンボーディング動画、インタラクティブなトレーニング、テキスト形式の資料などを駆使して、充実した研修体験を提供しましょう。
バーチャルトレーニングハンドブック
企業が動画を活用して従業員に必要な情報を提供し、オンボーディング時間を短縮している方法をご覧ください
Vimeoのマスタークラスシリーズのエピソードでは、動画を活用したオンボーディングのポイントを詳しく解説しました。以下の動画でその一部をご紹介します。
リモート環境で新入社員をオンボーディングする方法
リモートで新入社員を迎えるための、5ステップのアクションプランをご紹介します。
1. オンラインオンボーディングの事前準備
高い成果を上げている企業の83%が、入社初日より前にオンボーディングを開始しています。良いスタートがいかに重要かを理解しているからです。事前準備をすることで、スムーズな進行が可能になります。さっそく、以下のステップから始めましょう。
- 入社前に、ハードウェア、マニュアル、社員ハンドブックをすべて新入社員に送付しておきましょう。もしくは、購入用の予算を渡し、準備の期限を設定する方法もあります。
- ITチームに依頼して、新しいハードウェアのセットアップをサポートしてもらいましょう。VPNやセキュリティソフトのリモートインストールなどもこのステップに含まれます。
- 企業グッズ(マグカップ、ステッカー、Tシャツ、靴下など)を送って、新入社員がチームの一員だと実感できるようにしましょう。
- 社内コミュニケーションツールを案内し、新入社員のアカウントを開設しておきましょう。
- 新入社員の情報(前職や趣味など)を共有して、チーム全体で歓迎できるようにしましょう。
契約書類の手続きをスピーディに進めるために、DocuSignなどの安全な電子署名ツールを使って、新入社員に事前に書類へ記入・署名してもらいましょう。
2. 新入社員向けのリモートオリエンテーション
オリエンテーションでは、新入社員を新しいチームメンバーに紹介します。初日に顔を合わせるべき相手は、担当の人事、配属先のマネージャー(直属の上司)、そしてCEOの三者です。
もし選考中にこれらのメンバーとまだ会っていなければ、まずは紹介のビデオ通話を設定しましょう。その後、主要なメンバーとの1対1ミーティングの時間を確保してください。
最初の通話は仕事の話に偏りすぎず、ライトな雰囲気で行うのが理想的です。その上で、業務の進め方や役割への期待、短期・長期の目標についても軽く共有しておくとよいでしょう。
3. 一緒に働く人とのミーティングを設定する
新しいメンバーを社内のSlackで紹介しましょう。自分で行ってもよいですし、専任の担当者に任せても構いません。
ステップ1で共有した情報をもとに、それぞれが新メンバーに合わせたウェルカムメッセージを作成します。
次に、新メンバーとチームメンバーとの顔合わせのミーティングを設定して、関係構築を促しましょう。Vimeoでは、最初の1週間に行うイントロミーティングをGoogleカレンダーで事前に設定し、スムーズに進行するようにしています。
4. 業務理解とトレーニングのためのオンボーディングセッションを実施する
リモートオンボーディングでは、会社の事業内容や提供サービスを新しい社員に理解してもらうことが重要です。そのために必要なトレーニングセッションを計画しましょう。
Vimeoでは、すべての新入社員に対して、入社初月に以下のようなトレーニングセッションを実施しています。ぜひ自社のオンボーディングでもご活用ください。
👉新入社員向けオリエンテーションとTrust and Safetyチャット:Vimeoのミッション・ビジョン・バリューの概要や、社内の人と組織の紹介を行います
👉新入社員向けオリエンテーションと米国向け福利厚生セッション:米国社員向けの福利厚生制度とその申請方法を説明します
👉プロダクトセッション:Vimeoが提供する各種プロダクトの概要と使い方を学びます
👉ストラテジーセッション:Vimeoのユーザー像、戦略、目標、ポジショニングなどを深掘りして学ぶセッションです
👉セキュリティセッション:新入社員に対して、Vimeoのセキュリティ規定を紹介するセッションです。
5. 小さなタスクを任せ、仕事モードへ切り替え
オンボーディングミーティングやトレーニングが一通り終わったら、新入社員の直属の上司に、簡単なタスクを割り当ててもらいましょう。この目的は、新入社員に今後の働き方や、誰と連携すべきかを実践的に理解してもらうことです。
新入社員には、プロジェクトの背景や詳細情報を十分に伝えるようにしましょう。何をすべきかの具体例に加えて、連絡先となる担当者の情報も共有してください。
オンボーディング動画の作り方
動画は単に手順を説明するのではなく、実際にどのように作業を進めるのかを視覚的に示せるため、新入社員のオンボーディングに非常に役立ちます。たとえば、最初の30日間の流れを紹介するオンボーディング動画を用意することで、スムーズな導入を促すことができます。製品の使い方を説明するチュートリアル動画も同様に効果的です。
オンボーディング動画には主に2種類あり、1つは標準的な案内動画、もう1つは操作手順を解説するウォークスルー動画です。標準タイプの動画は、テンプレートを使えば簡単に作成できます。
以下は、ウェルカム動画のテンプレート例です。
実際の例は次の通りです。
もうひとつの方法が「ウォークスルー動画」です。これは画面収録(必要に応じてカメラ映像も追加可能)を使い、製品の使い方などを実演する形式です。たとえばVimeoの画面録画ツールでは、画面やカメラ、またはその両方を使ってトピックを紹介できます。
Vimeo Recordは多くのお客様に支持され、次のような声をいただいています。
「私たちは10時間以上の時差があるチームを抱えているため、全員がオンラインの状態で作業できる時間が限られています。このツールを非同期の共同作業として使用できるため、全員がオンラインになりテーマに集中する貴重な時間を節約できます。」
Vimeo Recordは、新入社員に自社のシステムや業務の流れを伝えるのに、シンプルで効果的な方法です。
新入社員向けのオリエンテーション動画の作成
この作業にはそれほど時間はかかりません。以下のヒントを参考にしてください。
- 動画の長さは5〜10分が理想的です。会社の沿革や理念など、特定のテーマに絞った短い動画をいくつか作ると良いでしょう。
- 経営層や直属の上司から、新入社員へのウェルカムメッセージを伝えましょう。
- チームの一員として歓迎されていると感じてもらうために、ひと工夫を。たとえばVimeoでは、ある新入社員のプライベートでの趣味を紹介したウェルカム動画を作成しました。
リモートオンボーディングのよくある10の落とし穴とその解決策
最後に、リモートオンボーディングのよくある10の落とし穴とその解決策についてご紹介します。
1. 新入社員に「やりながら覚えて」もらおうとする
初日は誰にとっても緊張するものです。入ったばかりで何をすべきか分からず、すべてを自力で解決しなければならない状況では、その不安はさらに大きくなります。
そうした不安を与えないように、初日のタスクをリスト化したチェックリストを用意しましょう。
ソリューション:やるべきタスクをリスト化したオンボーディング用のチェックリストを用意する
たとえばVimeoでは「最初にやることリスト」をGoogleドキュメントで共有しています。これにより、行動に方向性が生まれ、不安を和らげる助けになります。
2. 成長のためのロードマップを示さない
リモートオンボーディングを後回しにするべきではありません。行き当たりばったりで進めると、新しい役割でどう動けばいいか分からず、新入社員が混乱や不満を感じることになるでしょう。
新入社員が力を発揮できるよう、明確な計画を用意しておく必要があります。
ソリューション:新入社員がスムーズに活躍できるよう、事前に戦略的なプランを立てましょう。
たとえば、30・60・90日プランのように、最初の数カ月で達成すべきタスクを段階的に設定する方法があります。このプランでは、入社から30日目、60日目、90日目までに完了すべき業務を明確にし、社員が着実に成果を上げられる道筋を示します。
このようなプランは、新入社員にとって行き先と道順を教えてくれるナビのようなもの。最初の数カ月でどの方向に進み、どのタイミングで何を達成すればよいのかを、明確に示してくれます。
3. 新入社員を企業文化に一人で慣れさせる
新しい会社にリモートで入社し、まったく異なる企業文化に誰の助けもなく順応しなければならない状況を想像してみてください。新しい職場環境を一人で乗り越えるのは、とても困難で孤独感が強く、心細さを感じさせます。
ソリューション: 新入社員に、企業文化を案内してくれる「バディ」をつける
オフィスの中に、新入社員を温かく迎えるのが得意な人がいれば、その人を新入社員の頼れる存在=バディに任命しましょう。
Vimeoでは、すべての新入社員に「ハイヤーバディ(Hire Buddy)」をつけています。ハイヤーバディは、社内文化や働く環境について丁寧に案内し、入社から1カ月間サポートを行います。また、Buffer社では2人のバディをつける仕組みを採用しています。ひとりは同じチーム内で実務的な質問に答える「ロールバディ」、もうひとりは社内文化を教える「カルチャーバディ」です。
4. 新入社員の様子を十分に確認しない
新入社員が順調だと勝手に思い込んではいけません。新しい職場に慣れるまでには、不安やストレスを感じることも多いもの。こまめに様子を確認しなければ、新しい業務に馴染むために必要なサポートを十分に届けられません。
ソリューション:定期的に声をかける
日々のコミュニケーションを欠かさず、「何か手伝えることはある?」と気にかけることで、新しいメンバーも安心して相談できる関係を築くことができます。
5. オンボーディング体験に対する意見や感想を聞かない
オンボーディングは、一度導入すれば終わりというものではありません。社員の連携やコミュニケーションが高度化するにつれて、オンボーディングのあり方も進化させる必要があります。フィードバックを集めなければ、改善点を把握できず、新人が職場にしっかり定着するために必要なサポートも行えません。
ソリューション:オンボーディング完了時に必ずフィードバックをもらう
全ての新入社員にオンボーディング体験についての感想を聞くことで、プロセスを継続的に改善できます。Vimeoでは、90日後に実施するフィードバック調査で、オンボーディングに関する質問を行っています。
以下のような質問が効果的です。
- 最も楽しかったのはどんなことでしたか?
- 新しい仕事に慣れる上で、より良い方法は何だと思いますか?
- オンボーディングプロセスのどの部分が、自分の業務やチームの理解に役立ちましたか?
6. オンボーディング全体を記録していない
オンボーディングは、長く複雑なプロセスです。すべてのステップを記録せずに記憶しておくのは、ほぼ不可能と言っていいでしょう。記録を怠ると、新入社員の成功を左右する重要な工程を見落としてしまうリスクがあります。
ソリューション:オンボーディングの全体像を最初から最後まで記録する
手順をすべて書き出しておけば、各工程を思い出しやすくなります。さらに、自分が不在の場合や別の会社へ異動する場合でも、他の採用担当者がスムーズにオンボーディングを引き継げます。文書化することで、誰がどの作業を担当するか、どのように進めるかを明確に伝えることも容易になります。
以下のような項目を記録しておくとよいでしょう。
- 新入社員が知っておくべき主要メンバーの一覧
- 新入社員が使用するハードウェアおよびソフトウェアの一覧
- 業務ツールのログイン設定を行う担当者
- ハードウェアの手配を担当する人、その方法や納期
- バディによる新人サポートの手法や、効果的なフィードバックの方法をまとめた簡易ガイドまたはサポートメモ
7. 退屈で魅力のない資料に頼りすぎている
リモートで入社した社員にとって、ワンシートやPDF、スライド資料は必要な情報を得るうえで役立ちますが、楽しくは感じられないかもしれません。自社の社風や働く楽しさを伝えるなら、オンボーディング動画という手段が効果的です。
ソリューション:動画で楽しさと魅力をプラスする
CEOからのウェルカムメッセージから、経費精算の手続きまで、動画はビジュアルでストーリーを伝えられる、非常に強力な手段です。
たとえばAxalta社は、バーチャルトレーニングの魅力を高めるため、映像表現に映画的なアプローチを取り入れました。Netflixのような体験を提供し、動画のクオリティを高めることで、より印象的で効果的な学習環境を目指したのです。チームが効率よく学べるよう、トピックやチームごとに動画を整理し、研修内容の理解や立ち上がりのスピードを高めながら、社内のつながりの強化にも成功しました。
8. オンボーディングを画一的に設計してしまっている
リモートオンボーディングのプロセスは、往々にして一方通行で画一的に設計されがちです。ですが、学び方は人それぞれ異なり、全員に同じやり方が合うとは限りません。こうした一律の設計では、新入社員は自分に合ったペースで取り組めません。
ソリューション:社員が主体的に取り組める設計にする
人事チームで、新入社員が自らオンボーディング体験を構築できる情報ライブラリを用意しましょう。こうすることで、社員は自分のタイミングでコンテンツを再確認したり、必要に応じて自由にアクセスできるようになります。
たとえば、多国籍自動車製造企業であるStellantis社では、トレーニングセッションをオンデマンドのオンボーディング動画としてまとめ、社員がいつでも閲覧できるパフォーマンス・アカデミーで配信しています。
「このコンテンツのカタログにより、従業員が自分の都合のよい時間や場所でコンテンツを学ぶことができます。トレーニングは24時間、年中利用できます。パフォーマンスの向上につながることがわかっているため、自分の好きなタイミングで実行している従業員が数多くいるので、これは重要だと思っています。」
9. オンボーディング中のチームビルディングをおろそかにしている
リモートワークでは、物理的なオフィスで自然に生まれる雑談や偶然のやり取りが失われがちです。
たとえばランチ中の会話、エレベーターでのちょっとしたやり取り、会議前の立ち話といった交流は、新入社員が社風に馴染むうえで欠かせない要素です。オンボーディング中にこうした体験を意識して設計しないと、新入社員は疎外感を覚え、作業がスムーズに進まなくなってしまいます。
ソリューション:チームビルディングの要素を組み込む
こうしたつながりをリモート環境で再現するには、リモートオンボーディングに少し余白を設け、社員同士が気軽に交流できる仕組みを整えましょう。たとえばSlackに専用チャンネルをつくり、チームメンバーがアイデアを共有したり、質問をしたり、ちょっとしたミームで笑い合える場をつくるのも効果的です。
さらに一歩進めて、クイズ大会やバーチャル飲み会、サウンドバスのようなオンラインチームビルディング・アクティビティを取り入れるのもおすすめです。入社初期の緊張をほぐし、楽しみながらチームに馴染んでもらう良いきっかけになります。
10. インクルーシブな視点が欠けている
リモートオンボーディングを行う際には、誰もが「受け入れられている」「尊重されている」「きちんと配慮されている」と感じられるようにすることが大切です。こうした配慮を欠いたままでは、新入社員が安心して力を発揮できる環境とは言えません。
ソリューション:インクルーシブであることを意識して設計する
オンボーディングに使う資料は、すべての社員がアクセスしやすい形式で提供しましょう。また、内容を理解しやすくするための代替手段も用意することが重要です。
たとえばStarbucksでは、すべての動画に字幕を必ず付けています。視覚に障がいのある社員に配慮し、文字起こしや音声解説付きのオンボーディング動画を用意することも有効です。
コミュニティ・オンボーディング
Vimeoのオンボーディング・マスタークラスでは、「コミュニティ・オンボーディング」という概念にも触れています。これは、リモート環境でも誰もが安心して参加できる場をどうつくるかというテーマです。以下をご覧ください。
オンラインオンボーディングに関するよくある質問(FAQs)
オンボーディングの4つのフェーズとは
オンボーディングには、以下の4つの段階があります。
- オリエンテーション(新入社員を歓迎)
- ロールトレーニング(新しい仕事に関する指導)
- トランジション(業務の自立的遂行を促進)
- デベロップメント(キャリア成長に向けた計画を作成)
オンボーディングとトレーニングは同じ?
オンボーディングとトレーニングは別のプログラムですが、連動して機能します。オンボーディングは、新入社員に会社やチーム、社内文化を紹介するためのプロセス。一方でトレーニングは、具体的に業務の進め方を教える実践的な活動を指します。
バーチャル環境で社員をトレーニングするには?
社員をオンラインでトレーニングするには、動画やインタラクティブな教材の活用が効果的です。業務の流れを動画でウォークスルー形式で見せることで、手順を単にリスト化するよりも、理解を深めやすくなります。また、こうしたコンテンツを動画ライブラリのように一元化しておけば、社員が必要なときにいつでもリソースにアクセスできます。
オンボーディング期間はどのくらい?
一般的に、オンボーディングは90日間かけて行われます。最初はイントロダクションのビデオ通話やウェルカムメッセージから始まり、3カ月後のチェックインで締めくくられるのが一般的です。ただし、具体的な期間は企業によって異なります。
まとめ
オンボーディングで必要なステップやチェックリストが整理できたら、次は計画を実行に移す番です。新入社員に長く、楽しんで仕事をしてもらえるよう、今のうちに計画を立て、土台を整えておきましょう!
動画を活用して新入社員をオンボーディング
Vimeoを使って動画を作成、共有、管理する方法もぜひご覧ください。ライブ配信、コンテンツのホスティング、画面録画ソフト、動画プロンプト、分析ツールなど、多彩な機能について詳しくご紹介しています。